●Nicca 3-L w/Nikkor 50/1.4
\ 94,500
国産35ミリカメラは、かつてコピーライカ一色であった。それは、スチル写真に映画用の35ミリフィルム流用した元祖のライカに追いつけ追い越せという時代を反映した、必然であったと言えるかも知れない。しかし模倣はあくまで模倣であり、本家を超えることは遂に出来なかった。発表当時「ライカを超えた」と言われたニコンSPですら、ライカが従来のバルナックタイプのフル・モデルチェンジとして世に送り出したM3の前では、少々影が薄くさえ見えた。
M3によって日本のカメラ業界はレンジファインダーを諦め、一眼レフに主力をシフトしていく。それからの努力が実を結び、後年の一眼レフ全盛時代につながるのは周知の通りである。ライカM型は到底マネの出来るようなカメラではなく、またライカの後を追って模倣を繰り返していたのでは永久に本家は超えられないと、日本のカメラメーカーが思い知るきっかけとなったわけだ。
従って、「コピーライカ」と呼ばれるカメラはキヤノンをはじめとしてレオタックス・ニッカなど、そのほとんどが所謂バルナック・タイプのモデルであるが、そんな中にあってひときわ異彩を放つカメラが、このニッカ3Lだ。これは何と無謀?にも、M型ライカを真似て造られた唯一と言ってもいい国産コピーライカなのである。

写真を見ておわかりの通り、見た目はかなりM3に近い。フラットな上面を持つ軍艦部、左右のアールを描いた曲面仕上げなどはM3そのままという感じである。

背面に設けられたスイングアップしてフィルム装填をし易くするドア部分もM型と同じである。中央には本家と同じく、円形のフィルム・インジケーターまで備えている。
オリジナリティーを見せている部分としては、黒い樹脂製のファインダー周りと巻き上げレバーであるが、これは明らかに耐久性という点ではすべて金属によって仕上げられたM3に劣るところでもある。恐らくはコスト・ダウンの目的でこうした形になったのであろう。そのファインダーの構造も、費用と手間が惜しみなくかけられたM3のそれとは比較にならないもので、従来のバルナック型(のコピー)を踏襲しているに過ぎない。
シャッターもまた、バルナック・タイプと同様にスローが別になっているもので、ボディ前面にはスローシャッター・ダイヤルが設けられている。

底蓋はM3そのままという感じで、多くのカメラ好きはこの部分だけの写真を見せられて「何のカメラ?」と聞かれたら即座に「M3」と答えるに違いない。
結局の所、出来るだけ開発費用はかけずに、旧来のままのメカにM型ライカを真似た外皮を被せて出来た、エセM型のライカ・コピーと言っても過言ではない。

立派な革ケースも用意されたそれなりの高級品ではあったが、商業的に成功したとは言い難い。それもそのはずで、時代は既に革新的なM3によって塗り替えられ、日本のメーカーは一眼レフに活路を見出そうとして、国産ライカ・コピーという存在自体、過去のものになろうとしていたのである。
結果的には短命なカメラとなり、あまり大量に出回らなかったことから、後年になって希少価値が出てきたのだから、考えてみれば皮肉なものである。
ニッカのカメラは、この3Lをもって終わる。それはまた、長期に渡って日本のカメラ業界を支えてきたコピー・ライカの終焉をも意味している。
様々な意味で、一つの時代を象徴するユニークな1台である。
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