●Nikon F3 Limited 新品/未使用
\ 210,000
ニコンMFカメラ最後のフラッグシップ機となってしまったF3。歴代のF、F2と比べても遜色ない、名機と呼ぶにふさわしいカメラであった。Fが1959年から1970年まで、F2が1971年から1980年までと、いずれもほぼ10年で次世代にバトンタッチする形で現役を退いているのに対して、F3は1981年に登場してから21世紀に入った2001年まで、なんと20年もの長きに渡ってニコンの最高級機の座を守り通したのである。
ニコンのF(一桁)シリーズは、Sシリーズを引き継いで今日に至るまで、常に報道カメラマンによって第一線で使用され続けてきた、高い信頼性を誇るカメラである。FとF2は機械式シャッターのフルメカニカル・カメラだが、このF3は絞り優先AEを搭載した所謂「電子式カメラ」だ。それでも戦場をはじめとする過酷な条件下での酷使に耐え、数え切れない程の20世紀における歴史的映像を遺して来たのだから、驚異的と言う他はない。
それ程のカメラであるから、報道写真家向けのF3Pという特殊モデルが存在したのも頷ける話だ。
"P"とはPress(報道)の頭文字である。(Professionalの"P"ではない。)通常の市販品レベルでも、他社製の高級機や同じニコンの他機種とは比較にならない堅牢性を誇るF3であるが、細かい操作部をより無駄なく操作しやすくするとともに、防滴機能や剛性を高めた仕様となっている。それだけコストもかかっており、一般には販売されなかった。
しかし、入手困難かつグレードが高い製品となれば、どうしても欲しくなるというのが、カメラファンに共通する心理である。とりわけコレクターをはじめとするニコン・マニアにとっては、自分のコレクションを充実させるために必要不可欠な存在ということになる。
そんな熱心なニコン信者の要望に応える形で同社が限定品として販売したのが、ここに紹介するF3リミテッドである。
F2の時代にも、当初は報道用としてのみ製造したF2チタンを、一般ユーザーからの要求に応じ、"Titan"という刻印を入れて販売した前例があったが、F3リミテッドも販売に至る経緯はそれと大変よく似ている。
仕様(スペック)はF3Pと全く同じで、限定の特殊仕様である事を示す"Limited"という刻印が、金文字でボディに彫り込まれている。
ただし、F2チタンが化粧箱などは通常の商品と同じものを使い、ステッカーだけで区別するのみであったのに対し、こちらは「リミテッド」と謳うだけあって化粧箱からして豪華に作られている。


説明書などはノーマルのF3HPと同じだが、専用付属品としてこのモデルの品名が刺繍されたオリジナル・ストラップが同梱されていた。
このストラップも、ニコンのプロフェッショナル・サービスがプロ・カメラマンにのみ供与していた特別の仕様を、そのまま模したものとなっている。当時はF3P本体と同じく市販されていない為に入手が困難な事から、「プロスト」と呼ばれてマニア間では高価なプレミア付で売買されていた、黄色と黒を基調とする幅広のストラップである。
黄色と黒はニコンのブランドイメージ・カラーをそのまま用いたもので、「プロスト」とは言うまでもなくプロ用のストラップを縮めた略称だ。

ノーマルF3と異なる仕様は、主にシャッター周りに集中している。レリーズボタンは防水のためにラバーキャップによってシールドされており、レリーズロックは機械式になっている。シャッターダイヤルはマニュアル操作がし易いように背の高いものに部品が変更されているし、セルフタイマーも省かれている。報道の現場でのんびりセルフタイマーを使っての記念撮影などあり得ない事だから、間違ってセルフを作動させてシャッターチャンスを逃すことがあってはならないという配慮である。(レリーズボタンがラバーで覆われているので、当然だがケーブル・レリーズも使えない。)

巻き戻しノブを引き上げることによって裏蓋を開閉する機構はノーマル機と同じだが、余分な操作を排するためにロック解除用の小さなレバーは付いていない。ただ上向きに引っ張り上げればワンタッチで裏蓋が開くようになっている。
素早さが何よりも優先される現場では、誤操作防止よりもフィルム交換にかかる時間を短縮することの方が大事なのである。間違って裏蓋を開けてしまってフィルムを露光させるような初心者は、プレスカメラマンには存在しない。

ペンタ部分にもホット・シューが設けられている。このシンクロ接点は、TTLストロボ調光には対応しない。あくまで、単純にシンクロ発光させるためのみに用いる。
ガンカプラーを使用すればTTLオート調光も可能だが、巻き戻しノブ部分を塞いでしまうので、プロ向けではない。報道写真では「写っていること」が何よりも大事なのであって、「キレイに撮れている」かどうかは二の次なのである。従ってストロボも必要な量の発光さえ得られるなら、わざわざカメラに光量を調節してもらう必要などないのだ。
ちなみに、このホットシュー増設に伴って、ペンタカバー部の強度を高める必要があるというニコンの判断から、ペンタ部の材質はチタンが採用されている。(底板にもチタンが使用されている。ただしチタンモデルとは異なり、軍艦部の金属はチタンではなく真鍮のままである。)
その他にもフィルムカウンターなど、幾つかノーマル仕様のF3と異なっている箇所がある。詳しくは、専門の書籍などをご覧頂きたい。
さて、F2チタンの場合は一般にも市販された刻印入りボディよりも刻印無しの方が稀少性が高いとされ、中古相場もやや上となっているが、F3PとF3Limitedではどうだろうか。
F3は冒頭にも述べたが20年というロングセラーを記録したカメラであり、プレス仕様が作られていた期間もかなり長期に及ぶ。これは報道機関など然るべき依頼者からの注文さえあれば、それに応じて製造・供給されたので、台数としては決して少ないとは言えない。今でも、中古市場では割合よく目にする事が出来る。(かなり使われて傷んだコンディションのものが多いけれど。)
一方、F3リミテッドはその名前の通り「限定品」である。台数限定ではなく、一定の注文期間を区切った形で限定的に販売されたので、全部で何台が世に出たかは不明であるが、数量的にはF3Pより遙かに少ないはずだ。一般に、中古市場でもF3Pを上回るプライスタグがつけられている事が多いのも、それ故であろう。
さらに、今年の第7回/銀座中古カメラ市で販売予定のこのF3Limitedは、メーカー保証書付の完全新品である。未使用であるのは当然のことだが、1994年に販売された当時の新品そのままである。既に10数年が経過しているので、保証書の無償修理が有効かどうかはニコン社の判断に委ねるしかないが、コレクションとしての価値は未記入の保証書があるかないかで大きく異なる。やはりボディが新品状態ならば、付属品や添付の印刷物に至るまで、すべて新品と変わらない状態で保存されている事が望ましいであろう。
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