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Angenieux AF28-70mm F2.6 Nikon-AFマウント

\ 126,000

このページをご覧になっていらっしゃるほどのクラシックカメラ・ファン、写真愛好家の皆様ならば、アンジェニューと言う名前は既にご存知であろう。

アンジェニュー社は、ピエール・アンジェニューが1935年にフランスで創設した、名門レンズメーカーである。
現代の主流である一眼レフカメラに用いる広角レンズは、1950年に同社が世に出したレトロ・フォーカスと言うレンズが基本になっている。この技術無しには、今日のような一眼レフ全盛の時代はあり得なかったと言ってもいい。

ライカをはじめ、エキザクタやアルパなど当時のトップ・ブランドを占めるカメラに装着する各種交換レンズを製造していたが、その後シネ用のレンズに主力を移し、現場の要請から一本のレンズで可変的な焦点距離の得られるズームレンズの開発・製造をメインに行うようになった。
ライカR用の45-90mmなどは、その技術を35mmスチルカメラにフィードバックして生まれたズームレンズの傑作として、現在でも愛好家が多い。

描写は発色やコントラストの再現において、他のどんなメーカーとも異なる独特の個性を持っており、どこかにその発祥の地であるフランスの香りを漂わせた「エスプリ」を感じさせるもので、決して万人うけするものではないが、一度この味をしめると病みつきになってしまうマニアも少なくない。

その後、ヨーロッパの光学機器メーカーではよくある話だが、何度か経営母体が変わり、生産する製品も民生用から医療あるいは宇宙開発などといった特殊用途向けにシフトし、現在は残念ながら35mmカメラ用のレンズは生産していない。
同社として最後の一般向け35mm一眼レフ用交換レンズとなったAF28-70mm/F2.6を、今回の中古カメラ市に出品するので、まずはご覧頂きたい。



AFと言うからにはオート・フォーカスに対応しており、このレンズの場合はニコンAFマウント専用である。その他、販売されていた当時はミノルタ等をはじめ、一通りのメーカーに合わせたマウント付で供給されていたようだ。
フランスのレンズ・メーカが、わざわざ日本のAFカメラ用に各種マウントを組み込んで作っていたのか?という疑問が湧くのは当然のことと思うが、どうも製造自体は日本のレンズ専業メーカーであるトキナーが請け負っていたらしい。そう言えば、どことなくトキナーの製品と共通する質感がある。

しかし、そのプラスチッキーな外観や、トキナー社による製造というイメージを先入観として持ったままこのレンズを使うと、出来上がった写真を見た時に恐らく「裏切られた」という思いを抱かずにはいられないであろう。勿論それは、良い意味での「裏切り」なのであるが。
こうした現代的なAFズームでも、昔ながらのアンジェニューの「エスプリ」は失われず、しっかりと生きているのである。良くは写るが無機的で没個性な国産レンズとはどこか違っている。アンジェニューのレンズをライカなどでお使いになって、その魅力を理解しているユーザーならば、きっと満足されるに筈である。

そもそも、F2.6という開放F値がいかにもフランス的でアンジェニューらしいではないか。日本のメーカーならば設計の段階から他社に倣えで、キリの良い2.8にとどめておくであろう。わざわざF2.6という妙に中途半端な明るさを採用するところが、他人と同じになる事を良しとしないフランス人気質を感じさせる。そもそもこのメーカーはそのあたりに昔からこだわっていたのか(それとも些細なことにこだわらないのか??)、F2.5など中途半端な明るさのレンズが多い。
しかし、考えてみれば「大口径ズーム」と呼ばれる交換レンズがみなF2.8という開放F値で横並びの中にあって、わずかに0.2とはいえ、最も明るいズームと呼んでも差し支えないわけで、それなりに存在価値があるとも言えよう。



同社が日本に世紀の代理店を持っていたのかどうか、今ひとつ判然としないが、カメラ年鑑などを見てもこのレンズについて詳細な資料がみあたらないので、当時の価格や正式な生産終了年などは不明である。
名門ブランドによる大口径ズームと言うことで、高級品であったことは間違いがないようで、伝え聞くところでは米国で販売されていた価格が2600ドルだったらしい。

高級品にふさわしく、ちゃんと同社の刻印が入った専用のフィルターとフードが付いている。また、造り付けになっているフィルム面の形に合わせた四角いマスクも、かなり有効に機能しそうに見える。

そういう目でもう一度このレンズを眺めてみると、プラスチックっぽい雰囲気も文字の配色や配置がどことなくフレンチを感じさせてお洒落にも見えてくるし、いかにも高い潜在能力を秘めている事を期待させてくれる。
何より、あの名門アンジェニュー社の「最後の」写真用レンズであり、ほとんど市場でもみかけない稀少性もある。手持ちのニコン・ボディなら、AFでもMFでも使用可能という手軽さも魅力的だ。この機会に、一本手に入れてみるのも悪くないのではないだろうか。